【特別インタビュー①】IT業界の先駆者が子供に携えたい力とシンガポールへ家族移住という選択
インターネットの世界で昨今急速に注目を集めているWeb3.0。その第一人者である株式会社フィナンシェ/ Thirdverse / MintTown ファウンダー CEO 國光宏尚さんは、現在小学生の二児のお父さんでもあります。
今回は、インターネット業界を牽引する経営者として、また父親として、「教育」についてのお考えを伺う貴重なインタビュー。國光さんがわが子に選んだ進路とは? また今の時代に必要だと思う能力とは? 日本の高学歴者に多く見られる“学び疲れ”や、グローバルでの“雑談力”の必要性など、IT業界の最先端に身を置き、時代を牽引し続ける立場ゆえのキーワードや着眼点が盛りだくさん。子供の進路に悩む保護者たちに、大いに参考になる内容となりました。
(國光家お子様の進路情報)
長男:プレスクール(Summerhill international school)
→小学校(セントメリー 現在G4 )
→シンガポールの英国系インターナショナルスクールへ
長女:プレスクール(Summerhill international school)
→小学校(清泉インターナショナル 現在G1 )
→シンガポールの英国系インターナショナルスクールへ
グローバルで型破りな異色の人生経験から子供の教育も海外志向に
僕自身が世界中を旅してきて、長く海外でも働いていましたので、子供たちにも幼少期から英語は学んでほしいと思い、2人ともプレスクールからインターへ通いました。その後小学校もインターナショナルスクールを受験したのですが、老舗の学校に受かるには、日本の私立と同様、制服がきちんと着られているかなどの受験対策も必要ですし、日本の学校よりも1年早く読み書きも始まるので、準備が必要です。
二人ともプレスクールに通いながら、同時に広尾にあるインターナショナルスクールのための塾※GKCorsに数年間お世話になりました。妻は英語が話せませんが、率先してグローバルな教育方針に賛同してくれました。
そして、子供たちが二人とも小学校低学年になり、今夏から家族でシンガポールへ移住しました。アメリカも迷いましたが、子供のために治安・安全性、それから自分の仕事との親和性を考えてシンガポールにしました。子供たちは、シンガポールの英国系インターナショナルスクールに通います。カリキュラムもしっかりしていて、英語と中国語が両方学べ、校庭も広いなどの環境スペックも高く、友達家族も通っている、などの点が選択の基準となりました。
こうした海外志向の教育を考えるようになった背景は、僕の破天荒なキャリアにあります。僕は今49歳で、団塊ジュニア世代。その頃は、「偏差値の高い良い大学に行き、良い会社に入ると、良い人生になる」という社会の風潮が今以上に強くありました。
そんな中、僕も偏差値の高い高校に通っていましたので、周りはみんな一様に一流大学を目指していたのですが、僕は当時から「そんなの何がおもろいねん。俺は自分にしかできないことをやっていきたい! ビッグになりたい!」と思っていました(笑)。
それで、「このレールに乗って大学に行ったら負けだ!」と思っていたので、“大学に行かない”ということだけは決めていたのですが、さて、どうやってビッグになればいいのか?(笑)
当時はスタートアップ企業なんて無かった時代です。当時“成功する道”としては4つしかない、と考えました。
1スポーツ選手
2ミュージシャン
3お笑い芸人
4飲食店経営
1と2は自分には絶対無理や、と。3も迷いつつ(笑)、現実的には4の飲食業界を選びまして、高校卒業後は大学へ行かず、新聞配達をしたり、バーや飲食店などでフリーターをやっていたんです。そんな中、神戸の震災がありました。
僕の実家は神戸の灘区で、被害のど真ん中でした。幸い身内に不幸はなかったのですが、ひょっとしたら自分も死んでいたかもしれなかった。――その時、「今日死んでいたら、後悔しかない」と強く思ったんです。それで、ふと我を振り返ると、「ビッグになる」と言ったものの、現実の自分は“フリーター”です。このままじゃダメだと思って、海外に行くことを決意しました。
行き先は、アメリカか中国で迷って、将来的に急成長するだろう中国に賭けようと思いました。また当時は、中国での大学卒の初任給が1万円だった時代です。ですから、学費と寮費合わせても1年間40万円ほどで大学へ行けたんです。今では信じられませんよね。それで上海の復旦大学へ行きました。
その後、大学を中退して、バックパックで中南米含めて30カ国ほど旅をし、アメリカL.A.でサンタモニカカレッジに入ったりして、海外で29歳までの間10年ほどを過ごしました。ちょうどその頃に株式会社[1] アットムービーというドラマや映画などのプロデュース会社を森谷社長と一緒に立ち上げて、取締役として4年半ほど在籍してから、ネットの世界へ転身しまして、自身で株式会社gumiを立ち上げたんです。現在は、Thirdverse、MintTown、フィナンシェ、Gumi Cryptos Capitalなど、4つの会社の経営をしています。
子供の教育は語学重視でグローバルな「雑談力」をつける!
そんな自分の半生から、子供の教育については、世界で仕事をする上で、まずはコミュニケーション能力が必須だと思い、語学学習をベースに考えました。翻訳機では築けない本物の“人間関係づくり”の部分です。
語学って、個人の能力とはあまり関係ありません。日本に生まれたら日本語は誰でも喋れます。アメリカで生まれたらどんなに貧しい環境で育っても、英語は聞けるし話せるんです。小さい頃に語学に触れておくことで、将来の選択肢が広がり、世界中で働けるチャンスが生まれるという意味では、語学学習は最も費用対効果が高いのではと考えました。
特に「喋る・聞く」は、英語、中国語、日本語の3ヶ国語ができれば理想的です。ただ「読み・書き」については、マスターするのは1言語だけでいいかなと思っているんです。3ヶ国語全ての4技能をマスターするのは大変ですから。では、「読み・書き」を学ぶ言語は何か? 僕個人としては、日本語は難しい上に、世界中で使えるのは日本だけですから、効率が悪い気がしています。そこで僕の結論は以下です。
・話す、聞く →英語 中国語 日本語
・読み、書き →英語
ですが、ここはまだ妻と揉めるところですね(笑)。アイデンティティや家族生活など、ビジネスシーン以外の問題もありますから難しい側面があります。
ただ、ビジネスシーンで言うと、日本人は(海外で)雑談するのが苦手だと感じています。雑談は人間関係を築く上で大切なものですよね。この「雑談力」は、周りの環境が育ててくれるものじゃないかと思っています。 グローバルな人間関係の中に身を置いていると、必然的に共通項が生まれます。その共通項があってこそ、雑談が自然発生する、と。
なので、単にランゲージスキルだけを磨くということよりも、シンガポールの多種多様な人々がいる環境で育つことに意味があるのではと考えました。
また、海外では日本人はマイノリティですよね。子供たちには、そういった環境で、「よし、頑張ろう!」「努力しなきゃ!」というマインドを育ててもらえたら、とも思っています。
パート②へ続きます。
記事:田口まさ美(Star flower)